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2023.06.14
もし社長が認知症になってしまったら
目次
認知症の現状とこれから
厚生労働省が発表している認知症施策総合戦略(新オレンジプラン)によると、我が国の認知症高齢者の数は、2012年(平成24年)で462万人と推計されており、2025年(令和7年)には約700万人、なんと65歳以上の高齢者の約5人に1人に達することが見込まれているそうです。こうなると認知症は今や誰もが関わる可能性がある身近な病気です。
もし認知症になってしまったら
今や認知症は誰にでも関わってしまう可能性がある病気です。ではもし、社長が認知症になってしまうと、どんな事が起きるのでしょう。まずは、経営権である議決権の行使といった問題が出てきます。会社の運営で株主総会での決議事項がありますが、認知症になってしまうと議決権の行使ができないなど会社運営に大きな支障が出てしまう可能性があります。議決権は何株または何パーセントの保有などで行使できる内容は異なりますが、オーナー社長の場合自社の株式保有率100パーセントという方も少なくありません。そうなると、株主総会でなにも決められないという事になりかねません。何らかの対策を講じておく必要があります。
事業承継における認知症対策
事業承継で大きな問題となるのが自社株式の移転です。オーナー社長が100パーセント保有している自社株式を移転しようとする場合、社長が認知症になってしまっていると、自社株式を暦年贈与によって生前贈与するというような対策が出来なくなってしまいます。誰も認知証になりたくてなっている人はおりません。お元気な内に対策をとっておくことが重要であると言えます。もし、認知症にならなかったら、それはそれで素晴らしいことではないでしょうか。
自社株の認知症対策とは
認知症対策のために重要なこととは、事業承継の計画を策定し事業承継の時期や方法を明確にしておくことです。特に問題となる自社株式の移転時期と方法については、その対策を早めに計画することがとても大事です。では具体的な対策にはどのようなものがあるのでしょう。まずは、よく使われている暦年贈与です。自社株式を次の後継者に対して毎年贈与契約書を作成して贈与していくというものです。これを実行する場合には、まずは自社株式の評価を行い、贈与する株式数と何年で贈与していくのかを決定し実行します。自社株式の評価が高額な場合などは、評価引下げの対策を同時に検討する必要があります。
遺言を作成して対策を行う
自社株式の移転では、後継者の方が相続によって取得するという事もあります。その場合に必要となることが遺言の作成となります。その遺言の作成をするのに注意をすることで、自社株式を一人に集中させて相続させる場合に、他の相続人の遺留分を侵害していないかなどの注意を払うことが必要です。自社株の評価次第では起きない話ではありません。自社株の評価も社長ご自身の個人資産です。他の資産を合わせて考慮しながら遺言の作成が必要です。
民事信託(家族信託)を使った自社株対策
自社株式の移転で民事信託(家族信託)を使った対策もあります。この対策は、社長が委託者(頼む人)後継者を受託者(頼まれる人)または、別法人を受託者とする方法などいくつかの対策が考えられますが会社運営で重要な議決権と財産権を分けることが可能となります。例えば社長が元気な内は議決権の行使を社長ご自身が行い、社長に認知症が発症した場合(医師などの確定診断など)に、議決権の行使権限が後継者に移るというような対策です。社長と後継者で信託契約を締結しその契約にそって権限移譲をする対策です。この場合の財産権は相続などで受取ることもありますので、自社株評価の引下げ対策なども必要になることもあります。
令和5年の税制改正の影響
暦年贈与と相続時精算制度の改正が行われ、令和6年の1月1日よりの暦年贈与の持ち戻しルールが変更されました。贈与された財産は、将来的に相続が発生した時、相続財産に含まれないため、相続税の節税につながります。また、贈与を基礎控除内の金額で行えば贈与税の負担も発生せず、無税で財産を子や孫に移すことができます。しかし、亡くなる直前に贈与をすれば、贈与税や相続税の負担を逃れることができてしまうことになります。そこで、相続開始前3年以内に贈与された財産は、贈与がなかったものとして相続財産に含めることとされます。このことを持ち戻しといい、持ち戻しが行われると生前贈与しても相続税の節税にはなりません。この持ち戻しの対象となる暦年贈与が3年以内から7年前に拡大されます。この改正も考慮に入れた対策が必要となります。
対策は早めに行うことが重要
認知症という病気は誰にでも可能性があります。発症してしまってからでは自社株の対策も、個人の相続の対策もできなくなるだけではなく、ご家族の間がギクシャクするなどトラブルに発展しまうなど、いろいろな問題を引き起こす可能性があります。そのようなことにならないようにするためには、早めに事業承継の計画を立てて実行に移していくことが大事なことではないでしょうか。