ブログblog

2023.12.07

対策なき事業承継の悲劇

事業承継のお話をさせていただこうとすると、税理士に相談しているから大丈夫という回答をいただくことがありますが、もう少し深くお話を聞いてみると、疑問に思う事などがでてくることがあります。確かに事業を誰に継がせていこうということは、考えて行っているように思いますが、その後の相続のことまで踏み込んで相談されていない事が見受けられます。ではなぜ相続の問題まで考える必要があるのでしょうか。それは、事業承継は相続の一部であるからです。事業承継は経営権の移転と財産の移転が伴います。どちらか一方だけでは完結しないのです。つまりは、相続財産の一部が移転するという事です。誰でも自分の亡き後に家族間で揉めることは望まないはずです。せっかく対策を考えるなら家族間で納得のいく対策を考えられてはいかがでしょう。

事業承継・相続の対策を考案する場合は、現状の分析を行い社長の想いを整理して、その想いに最大限の配慮をしながら、事業承継計画書を作成して優先順位を決めていくことが大事です。特に現状の分析を行うことは、結果として社長の想いをかなえることに繋がりますので極めて重要な事だと思います。優先順位を決めた後は、スケジュールに落とし込んでいき確実に実行していくことです。その際にその内容によって専門士業に委託し、実行していくことがあります。専門分野は専門家にということです。税務の専門家は税理士、不動産の登記や遺言の作成、最近注目の家族信託は司法書士ということになってきます。その際に注意したいのが、その士業の先生が事業承継や相続に精通しているかということに注意が必要です。専門家の士業の方でも相続の案件に携わったことがないなど、不得意とする方が存在することもあるからです。事業承継・相続の対策は一生に何度もあることではありません。しかし、社長の想いを後世に残す大切なことでもあります。今からしっかりと現状分析から始めてみてはいかがでしょう。

事業承継・相続の対策を立案してから完結するまでは、ある程度の時間が必要となります。そのためいつから始めるのかはとても重要なことになります。なぜなら、対策を先延ばしにしたために思わぬ事態が起きてしまい、取り返しのつかない事態になってしまうこともあるからです。例えば、普段はお元気でまだまだこれからだという社長が突然脳梗塞で倒れたなどということは、誰にでも起きる可能性があるからです。普段は元気な社長ほど、仕事に集中し思わぬストレスがあり気が付かないうちに体に負担をかけているなどという事は珍しくありません。その時に何が起きるのかと考えると、まずは業務に支障が出てくることや、倒れた病状にもよりますが社長自身の法律行為が出来なくなり、対策そのものを行うことが出来なくなってしまうことが考えられます。するとその後の相続において、争族に発展してしまうこともありうるからです。事業承継・相続の対策は早く始めた方が良いというのは、このような事を未然に防ぐことが出来るからです。

最近社会で問題となっている認知症問題、元気な社長とお話ししていると自分は大丈夫と言われる方がおられます。本当にそうなのでしょうかとお尋ねすると、毎日仕事を行い頭と体を使っているから認知症にはならないとお話しされます。しかし、認知症の怖いところは認知症にかかってしまっても、自分が認知症であるということがわからないことです。私たちがコンサルティングさせていただいた企業の社長にも認知症を発症していらっしゃる方がおられました。その場合は、まず認知症の程度を認定していただき法律行為が出来るのかを判定してもらうことになります。もし、認知症の判定で法律行為が出来ないと判定されると、成年後見制度などを利用することになりますが、制限があり社長の想いを反映できなくなることもあります。認知症に限りませんが病気は、なろうと思ってなるものではありません。ご自身やご家族のために、一刻も早く対策に取り組まれることが重要だと思います。

一口に事業承継・相続対策といっても、いろいろなことを考慮することが必要です。事業承継の方法には親族に承継していく親族内承継、長年のビジネスパートナーの専務に承継するなどの親族外承継、他の事業者に雇用などを守りつつ承継するM&Aなど方法もいくつかあります。社長が長年かけて育ててきた会社を任せるのですから慎重になるのはよくわかります。しかし、決断しなければその次はありません。まずは、社長の想いを最優先にした承継方法を検証してみるとよいでしょう。そして、その承継のメリット、デメリットを把握することです。その後他の承継方法のメリット、デメリットを検証して最終的にどの方法を選択されるかを決断されることです。決断されたその後は計画書を作成してスケジュールに落とし込み、確実に実行してその結果を検証しながら進めていくことです。

事業承継・相続の対策を考案決定し、実行されて完了されたらそれで終わりかというと、そうではありません。社長の人生は、まだまだ長いのです。事業を承継し相続の対策を完了したら人生終わりではありません。重要な事は社長ご自身のセカンドライフをどう描いていくかが重要な対策の一つでもあるからです。そのためには、今からやりたいことを一つずつ書き出してみるのも良いでしょう。例えば、よく言われるのが自分は仕事人間で仕事中心の人生を送ってきたので特にやりたいことは無い。というようなお話しがあります。それでしたら、もう一度起業をしてみられたらいかがですか、というような提案をさせていただくこともあります。今までのような事業規模ではなく社長の責任も軽くなり人生を謳歌するための起業ですとお伝えすると、前向きに考えられる社長もいらっしゃいます。それぞれの社長によって考え方もまちまちですが、一度リタイヤしたからと言っても残りの人生を有意義で楽しく過ごすための対策は、忘れてはならない対策ではないでしょうか。

人生100年時代と言われて久しいですが、人生の最後に後悔をしたくはありません。そのためには事業承継も相続も家族間で納得した解決が一番重要です。自分の家族が争っているのをあの世から見ているなんて悲劇以外の何物でもないと思うからです。そのためにはまずは決断することから始まりますがご自分のセカンドライフまで含んだ対策をいつから始めるのかが重要です。まずは、信頼できるコンサルタントや士業の方たちと相談することから始められることです。もし、私たちがお役に立つことがあれば遠慮なくお申しつけください。