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2023.09.19

9月15日は敬老の日?

祝日法改正が改正されて

祝日法の改正で2003年から9月の第3月曜日が敬老の日になりました(ちなみに2003年は15日が第3月曜日だったため9月15日が敬老の日で2004年から9月15日ではない日が敬老の日になりました)。諸説ありますが、この9月の大型の連休を「シルバーウイーク」と呼ぶことが定着し始めたのは祝日法の改正で大型連休が実現するようになってからのようです。「ゴールデンウイーク」に対しての「シルバーウイーク」という事みたいですが20世紀は電車やバスの「優先席」を「シルバーシート」と呼んでいてそれと敬老の日をひっかけたのかな~なんて思ったりもしました。そんな昭和の時代、私が子どもの頃は9月15日の敬老の日には、おじいちゃん・おばあちゃんに似顔絵を届けたりなどちょっとしたプレゼントをもっていったりしていました。

その敬老の日の起源は1947年に兵庫県のある村で開催された「敬老会」であると言われています。当時その「敬老」の対象だったのは55歳以上の方だったそうです。国民的アニメとして超超長寿番組の「サザエさん」の原作が始まったのはこの頃。お父さんの波平さんは54歳という設定だそうですから高齢者の一歩手前、現代でいうと64歳という事でしょうか。おおむね、この敬老の日のあたりに厚生労働省が100歳以上の高齢者の人数を発表しています。

100歳超の高齢者

統計を取り始めた1963年は全国で153人、50年前の1973年は495人、1998年に初めて1万人を突破して今年は、92,139人になったと発表しました。今年は昨年から1,613人増えて実に53年連続で過去最高を更新したそうですから、あと何年かすると100歳以上の方が10万人を超えることになりそうですね。

国内最高齢の方は女性で116歳、男性は111歳の方。今年度中に100歳になる方は47,000人以上おられるそうなので来年の敬老の日には「54年連続で過去最多を更新」というニュースが出るかもしれません。

長寿化の進展

医療技術の進展や健康意識の高まりなどから日本人の長寿化はまだまだ進みそうです。1947年当時は55歳以上の方が「敬老」の対象だったのですが、当時の平均寿命は女性53.96歳、男性50.06歳でした。平均寿命というのは0歳児の平均余命ですから単純に全国民が平均「何歳まで生きる」という事ではありませんが、平均寿命から考えると55歳まで生きられてこられた方は尊敬に値すると考えられたことはもっともだと感じます。

この1947年生まれから1949年生まれの方がいわゆる「団塊の世代」といわれる方々ですが当時の平均寿命から考えるとびっくりするくらい長生きの方が多いことになりますね。2年後の2025年にはこの「団塊の世代」の方々が全員、後期高齢者になります。2021年の簡易生命表によると75歳の方の平均余命は男性で12.42年、女性は16.08年です。このことから推測するとご高齢の方の平均寿命は女性が91.08歳、男性は87.42歳とみることもできます。

健康寿命と平均余命

平均寿命は平均すると「何歳まで生きるか」という推測の統計値ですが一方、健康寿命という統計値があります。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。2019年の統計では男性は72.68歳、女性は75.38歳でした。単純に計算すると平均して男性では14.74年、女性は15.7年間にわたって健康上の問題で日常生活に制限がある状態で生きているという事になります。

この「不健康な期間」――「不健康寿命」と言い換えることもできると思いますが――の不健康の原因が何かによっては、制限されるのはいわゆる日常生活だけではなくなるかもしれません。

不健康寿命の期間にできなくなること

日常生活が制限されるという事と通常の日常生活ではすることのないことが制限される事を同列で考えることはできませんが、例えば不動産や保険・金融商品などの契約ごと、相続手続きなどの法律行為などができない状態になるとご本人のみならず、ご家族全体も制限を受けて大変困ったことになることがあります。

具体的には認知症や脳血管疾患などで意思表示ができなくなると、不動産の売買や賃貸借契約、保険の加入はもちろんですが保険の解約や保険金受取人の変更、投資信託や定期預金の解約などもできなくなります。場合によっては個人の普通預貯金口座の凍結がされてしまうこともあります。それだけではなく結構困るのが、例えば認知症のお母さんの夫であるお父さんが亡くなったときに通常の相続の手続きができなくなります。このような例の多くは後見人をつければできるようになるものもありますが、本当の意味でご家族の意思を反映した形での諸手続きができるかというと疑問が残ります。

不健康寿命に備える

近年は「終活」という言葉が色んな所で使われています。終活セミナーなんかに行くと「まずは【エンディングノート】を作りましょう」なんてよく言われていますよね。とっても大事なことですし、ご自身の意思を確認するためにも有効なことだと思います。ただ、法律上の力はほとんどありません。

認知症などで意思表示が難しくなってから、その状態に対応する制度としては「成年後見制度」の一つ「法定後見」がありますが、そうなる前、元気なうちに備えておくこともできます。「任意後見」「家族信託」「遺言」などの制度を上手に活用することで意思表示ができなくなってしまった時の備えになります。「備え」である以上は当たり前ですが元気なうちにやっておかなければなりません。意思表示できなくなってからでは打てる対策は限られてしまいますから。

持病があって日常生活には一定の制限があってもかくしゃくとして、ご家族やご近所さんなどの相談に乗っておられる本当に頼りになるご高齢の方はたくさんいらっしゃいますが、その一方で判断能力が弱くなってしまう方も。統計上は2025年には65歳以上の高齢者の5人に一人は認知症を発症すると言われています。

意思を伝えることへの備え

介護の世界では民間資格としての「認知症ケア専門士」という資格があり介護福祉士さんやケアマネージャーさん、看護師さんなどの職業の方の取得が増えてきているそうです。保険会社は各社各様の介護状態に備えた保険商品を売り出しています。認知症が原因で「不健康寿命」期間に入る前にやっておくべきことは、いざという時に様々な相談に乗ってくださる専門資格を持った方を探しておくことも大切ですし、保険などを活用した経済的な準備も大切だとは思います。最も大切なことは、意思表示ができなくなる前にキチンとご自身の意思を表示しておくことではないでしょうか。

この機会に「お亡くなりになった後のこと」よりも「お亡くなりになる前」の15年ほどに及ぶであろう「不健康寿命」への備えを一緒に考えてみませんか?