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2023.05.26

事業承継には羅針盤が必要

事業承継には何故羅針盤が必要なのか

これから事業承継を行う場合に、必ず必要となってくるのが事業承継の羅針盤となる事業承継計画表です。では、何故事業承継計画表が必要になってくるのか、計画表を作成した場合としなかった場合にはなにが変わってくるのでしょう。事業承継は譲る側も譲られる側も一生の間に何回も起きるわけではありません。したがって向かっていく方向はどの方向か、行う対策はどんな対策が必要か、その対策は誰がどういう方法で行うのか、その結果考えられる問題点は何があるのか、その問題は解決できるのかなど、いろいろなことを同時に考えて行動することが必要です。そこで、事業承継計画書という羅針盤を作成して承継後の会社の向かう方向や、計画上で行う対策の実行計画や方法などを明確にしてスケジュール管理の中で確実に計画を行動に移し、その結果を管理することで社長の想う事業承継を完遂させることが出来るのです。

事業承継計画表の内容

事業承継計画表を作成する場合には、どのような内容で作成すれば、しっかりとした羅針盤になるのでしょう。計画表の作成をするうえで最初に行うことは、現在の現状把握になってきます。会社の経営は、人、物、金と言われておりますが、自社株式の評価額、自社株式の株主構成と保有株式数、会社所有の不動産や有価証券、従業員の人数や年齢構成、会社所有の機会設備などの状況や社長個人の資産状況などの把握、それと後継者候補が決定していない場合は後継者候補のリストアップなど、事業承継計画表の内容は多岐にわたっています。まずは何が必要となる項目になるのかを、リストアップして書き出してみるとよいでしょう。

計画の立て方

事業承継計画表を作成する場合、必要となる項目をリストアップして、そのリストを時系列で計画表に落とし込みます。自社株式の株主構成が判明し、自社株式を会社が取得していくというような計画を立案した場合は、誰の株式をいつまでに、いくらの金額で取得するのか、そしてその取得する資金の資金計画を同時に考案していきます。このように項目別に計画を立て総合的に実効性があるのかを検証しながら計画を組み立てていきます。特に資金が必要となる場合は、実行前と実行後のキャッシュフローを十分に考慮しながら計画を立案します。何故なら事業承継の実行で本業の資金繰りが苦しくなるようなことが起きては本末転倒となるからです。

事業承継とPDCAサイクルとは

事業承継の羅針盤である事業承継計画表を作成して実行していくと、計画とのずれが生じることがあります。計画ではここで完了しているはずなのに完了していないとか、資金計画よりも金額が膨らんでしまうというような、必ずしも計画どおりにいくとは限りません。そこで必要となるのがPDCAサイクル「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」で計画から改善までを繰り返して事業承継計画表を完遂させていきます。経営とは人、物、金であり特に人と金は計画との乖離が出やすいものです。

PDCAサイクルを機能させて特にCheck(評価)とAction(改善)に注意を払いながら進めていきたいものです。

事業承継計画を立てるに最初は

事業承継計画を立案するには、最初に会社をとりまく各状況を正確に把握し立案していきます。具体的には

1・「会社の経営資源の状況」

従業員の数や年齢等の状況、資産の額及び内容やキャッシュフロー等の現状と将来の見込み等。

2・「会社の経営リスクの状況」

会社の負債の現状、会社の競争力の現状と将来見込み等。

3・「経営者自身の状況」

保有資産の現状、個人名義の土地・建物の現状、個人の負債・個人保証等の現状等

4・「後継者候補の状況」

親族内に後継者候補がいるか、社内や取引先等に後継者候補がいるか、後継者候補の能力・適正はどうか、後継者候補の年齢・経験・会社経営に対する意欲はどうか等

5・「相続発生時に予想される問題点」

法定相続人及び相互の人間関係・自社株式保有状況等の確認、相続財産の特定・相続税額の試算・納税方法の検討等

以上のことを正確に把握し、特に相続発生時にトラブルに発展しないように計画を立案することになります。

事業承継の方法は

事業承継の方法は、(1)親族内承継、(2)従業員等への承継、(3)M&Aの3つに区分されます。各承継方法のメリット・デメリットを把握するとともに、後継者候補等の関係者との意思相通を十分に行い、承継方法と後継者を確定しましょう。

1・「親族内承継」

メリット

一般的に、内外の関係者から心情的に受け入れられやすい。後継者を早期に決定し、後継者教育のための長期の準備期間を確保することも可能。相続等により財産や株式を後継者に移転できるため、所有と経営の分離を回避できる可能性が高い。

デメリット

親族内に、経営の資質と意欲を併せ持つ後継者候補がいるとは限らない。相続人が複数いる場合、後継者の決定・経営権の集中が難しい。(後継者以外の相続人への配慮が必要となる)

2・「従業員等への承継」

メリット

親族内だけでなく、会社の内外から広く候補者を求めることができる。特に社内で長期間勤務している従業員に承継する場合は、経営の一体性を保ちやすい。

デメリット

親族内承継の場合以上に、後継者候補が経営への強い意志を有していることが重要となる。適任者がいない場合がある。個人保証債務の引継ぎ等に問題が多い。

3・M&A

メリット

身近に後継者候補がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができる。現経営者が会社売却の利益を得ることができる。

デメリット

希望の条件(従業員の雇用、会社売却価格等)を満たす買い手を見つけるのが困難なことがある。経営の一体性を保つのが困難である。

約6割が親族内承継

近年比率は低下してきているが、全体の6割を親族内承継が占めており依然として事業承継の中心的位置を占めています。親族内の後継者は現オーナーの子息、子女が典型的ですがその他にも、甥や娘婿、配偶者が後継者となるケースもあります。親族内承継では、まず関係者の理解を得て後継者教育を行い株式財産の分配について注意を払いながら実行していきます。ここでいう関係者とは1・後継者候補との意思疎通(候補者が複数いる場合は特に注意します)2・社内や取引先・金融機関への事業承継計画の公表3将来の経営陣の構成を視野に入れて、役員、従業員の世代交代を準備します。

後継者教育は

自社の置かれた状況により取るべき手段は異なりますが、後継者を選定した後は、社内、社外教育をして、来るべき承継に備えます。円滑な事業承継のためには意欲的な後継者の育成が不可欠です。例えば社内では次のような教育が考えられます。「各部門をローテーションさせる⇒経験と知識を習得」自社の各分野をローテーションさせることにより、経験と必要な知識を習得させることができます。「責任ある地位に就ける⇒経営に対する責任が生まれる」経営幹部等の責任ある地位に就けて権限を委譲し、重要な意思決定やリーダーシップを発揮する機会を与えます。「現経営者による直接指導⇒経営理念の引継ぎ」指導内容は経営上のノウハウ、業界事情にとどまらず経営理念の引継ぎまで行われます。その他社外での教育は、他社での勤務を経験させる、子会社・関連会社等の経営を任せる、セミナー等を活用して知識の修得、幅広い視野を育成するなどが考えられます。